不倫をした夫や妻に対して慰謝料請求をしたい!いくらもらえる?

文責:所長 弁護士 山澤 智昭

 夫や妻の浮気が発覚。話し合ってみたものの、相手に反省の色がみられず、どうしても浮気の事実が許せない。

 それにあたって、慰謝料はいくらもらえるだろうと不安に感じていらっしゃる方もいらっしゃると思います。

 一方、不倫をしてしまい、不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされているけれど、あまりにも高額な請求だったため、本当にこの金額を支払わねばならないのかという不安をかかえていらっしゃる方もいるかもしれません。

 ここでは不倫をした夫や妻に対して請求できる可能性がある不倫慰謝料の金額について説明したいと思います。

1 不倫・浮気の慰謝料額

 不倫・浮気の慰謝料額の計算式というものは、実は世の中に存在しません。

 たとえば、交通事故の被害者の休業損害のように、慰謝料のなかには計算式がすでに決まっている種類のものもありますが、残念ながら不倫慰謝料についてはそういった計算式はありません。

 男女の仲は非常に複雑で目に見えない部分もありますので、なかなか一律の計算式にはなじみにくいということもあるでしょう。

 そのため、実際の夫婦の様々な状況を勘案して、金額が個別具体的に算定されることになります。

2 不倫慰謝料が発生する理由

⑴ 慰謝料が請求できる不貞行為とは

 どこまでを浮気というかは個人の感受性にもよりますが、慰謝料請求を検討する配偶者の感情としては、たとえば2人きりのデートを重ねていたり、キスやハグなどをしていたりすることが発覚しただけで十分ショックで、浮気だと思うことが自然です。

 しかしながら、裁判所が不貞行為として慰謝料を認定するかどうかの大きなメルクマールとしては、不倫での肉体関係の有無ということになります。

 浮気をしている配偶者が素直にその事実を認める場合を除き、この点を証明するのには客観的な証拠が必要になりますが、たとえば、ホテルで一晩を過ごした前後の写真などの証拠が残っていれば、これは不倫慰謝料を請求できる強固な証拠になります。

 ただし、2014年の大阪地裁の判決で、肉体関係の立証はできていないにもかかわらず、夫の冷たい態度は、交際中の不倫相手の存在の影響があるとして、44万円の慰謝料請求を認めたという事例があります。

 そのため、今後は肉体関係の立証ができなくても慰謝料請求が認められることもありえると思われます。

 不倫をされてしまったという方は、諦めずに弁護士等に相談をしてみましょう。

 また、慰謝料を請求される立場の方は、この点は心に留めておきましょう。

⑵ 不倫慰謝料の法的な根拠

 不倫慰謝料を請求する根拠としては、民法709条と民法710条によるといわれています。

 民法709条は、「故意または過失により他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」、民法710条は「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれかであるかを問わず、前条の規定により損害賠償責任を負うものは、財産以外の損害に対してもその賠償をしなければならない」と定めています。

 不貞をされた配偶者は、おおかれ少なかれ悩み苦しんでいますし、離婚する、しないに関わらず、配偶者の不倫はやはり誰にとっても大きなストレスとなります。

 そういった精神的苦痛は、直接名財産的損害ではないですが、上記に基づく法律上保護される利益として古くから裁判上認められてきました。

 したがって、不貞をした配偶者(法律用語では、「有責配偶者」とよびます)は、その精神的苦痛に対して金銭的補償をする義務を負うということになるのです。

 仮に離婚しなかったとしても、不貞行為は不法行為となりますので、不倫慰謝料が発生することになります。

3 不倫慰謝料の相場

 不倫慰謝料の相場は、不倫が原因で離婚する場合は約50万円から300万円、離婚をしない場合は数十万から200万円といわれています。

 戸籍の関係などから子供が成人するまで離婚は我慢するという場合は、事実上は破綻しているので離婚の場合と同程度の相場が認められることもあるようです。

 状況によってこれより低くしか認められないこともありますし、もっと高額な500万円の慰謝料が認められることもありますので、あくまで目安だと考えておきましょう。

4 不倫慰謝料の算定に考慮される要素

 それでは、実際に不倫慰謝料を個別具体的に算定するときに、どういった要素を踏まえて裁判官は考えるのでしょうか。

 上記のように離婚するのか離婚しないのかという結論に加えて、婚姻期間、年齢、不倫が発覚する前の夫婦関係といった要素が考慮されます。

 不倫慰謝料は、上述のように不倫という不法行為についての賠償金ですが、たとえば婚姻期間が長いほどそれを破綻させた不倫の不法行為の程度は重くなると考えられます。

 また、有責配偶者の年齢が、慰謝料請求をする配偶者よりも高い場合は、主導権を握っているはずの有責配偶者の不法行為ということで責任が重くなります。

 不倫が発覚する前の夫婦関係は、良好であるほど、慰謝料は重くなります。

 もともと不倫がなくても破綻していた場合、たとえば仮面夫婦だったというような場合は、その程度や期間にもよりますが、慰謝料は減額され場合によっては認められないこともあります。

 そうではなくて、もともとは良好であったのに、不倫という行為で愛人が夫婦の関係に入ってきたことで破綻したといえる場合は、やはり不法行為の程度は重いので慰謝料が高くなるのです。

 不倫の慰謝料はだいたい50万円から300万円前後とされていますが、先述の通り、場合によってはもっと高額になるケースもあります。

 他にも、不倫期間や肉体関係の回数、夫婦の間の子供の有無など多くの要素が考慮されることになります。

5 不倫慰謝料のお悩みは弁護士にご相談ください

 不倫慰謝料の相場感と、どういった要素が算定に際して重要なのかについて知る一助になれば幸いです。

 なお、不倫慰謝料を請求する側もされる側も動揺していて、インターネット上の玉石混合の情報をみては一喜一憂してしまいがちですが、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

 弁護士であれば、あなたの場合の慰謝料はどれくらいかということを個別具体的にアドバイスすることができますし、相手方に請求するときに間に立って交渉してくれるので精神的な負担が軽減されることも期待できます。

 不倫慰謝料でお困りの方は、当法人の弁護士にご相談ください。

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